鉛フリーはんだ(Sn−Ag−Cu)について
1. はじめに
近年、環境問題の位置付けにおいて人体に有害な重金属の鉛に対する取扱が問題となっております。(RoHS指令の製品含有禁止物質に鉛はんだが対象物質)そこで再資源化及び廃棄物処理問題に対し、はんだ付装置を電気電子機器関連ユーザーに提供を業務としている当社は、鉛フリー化に対応すべく研究開発による商品化を進めております。
弊社内デモ機において鉛フリーはんだ(Sn−Ag−Cu)によるテスト機設置によりユーザー各位とのご相談お打合せの用意を致しております。

2. 鉛フリーはんだについて
鉛共晶はんだに対し、鉛フリーはんだにおける、はんだ付性に関しましては諸条件設定の見直しを必要とされます。
鉛フリーはんだは耐熱疲労特性を含め優れた要素も有りますが従来の一般電気電子機器における鉛共晶に対し、溶融温度が36℃も高くなること及びコスト面による負担が多いことが考えられます。
結果このことによる装置を含む、はんだ付品質の追求に対するいくつかの課題が発生致します。
1) 溶融温度が220℃となり36℃高くなること
2) 比重が軽くなること
3) 酸化発生が多いこと
4) Sn−Ag−Cu成分性質上、溶融はんだに粘性が生じること
5) 部品への熱ストレス等の為、はんだ温度設定に限度を要すること
6) はんだの放熱(冷え)が早いこと
7) 基板へのプリヒート効果を必要とされること
8) コストパフォーマンスに問題が有ること

3. 鉛フリー化に対する課題
1) 使用材質(素材)の問題
従来Sn−Pb系はんだに多用されていたSUS‐304材質についてははんだ槽ユニット部(噴流機構部及ヒーター等)がSn−Ag−Cu系による素材面に錫喰われが発生する問題が有ります。
そこで対応方法として材質や板厚の変更及びコーティング(窒化処理)又、ヒーターにおいては錫喰われの少ないチタン製、もしくは槽外への方法等が考えられます。
最近では、錫喰われの少ない鉛フリーはんだが有るようです。

2) 酸化の発生問題
Sn−Pb系に対し多くなることが考えられます。
特にはんだ撹拌スクリュウ部等に対してはスクリュウの改良、効率を上げるもしくはN2供給により低減させる方が必要とされます。
又、はんだ槽全体に対してはメンテナンス対応と共に鉛フリーはんだのコスト面の推移によるところとなります。

3) 温度管理の問題
Sn−Pb系に対しSn−Ag−Cu系は、はんだ溶融温度が36℃高くなります。
しかしながら、はんだ温度設定に対し部品等への熱ストレスの関係上Sn−Pb系における温度範囲が想定され、熱不足が考えられます。そこで基板及部品に対しプリヒート効果が要求されます。又、フラックスの活性化を含めベストな設定ポジション調整がより必要となります。

4) マスクノズル冶具関連
酸化の発生率が高く、比重が軽く、放熱も早く、粘性も有る鉛フリーに対しての対策上、マスクノズル冶具設計に関してもよりその条件をクリアすべく各対策方法と同様に冶具設計に関してもよりベターな条件設定の研究開発テストを行っております。

4. 弊社での現状を申し上げます。
従来実績の有る鉛共晶用MPS‐400型をベースとしてPbフリー対応機としてすでに販売実績を得ております。
弊社の対策の進め方として社内テストの他、既ユーザー殿においてモニター的使用をお願いし約5年半程になり何かとフィードバックして戴く形で現在に到っております。
各ユーザー殿向、業界によりワークの違いに対し表面張力方法又、全体及び一部分噴流部のみオーバーフロー等、弊社の両用可能構造によりメリットがあるものと考えております。
5. 弊社の従来機とPbフリー対策機の違い

電気部における対策
1) 従来機リレー回路に対しシーケンサ(オムロン製)回路としている。
2) 従来機において1次噴流(予備噴流)及び2次噴流(本噴流ハンダ付)に対しプリヒート噴流(任意の高さ及び任意のタイム)を追加装備する。
3) ハイパワー及びドライバユニットモーターとしている

機構部における対策
1) 従来機ハンダに接触機構部品素材「SUS304」であったのに対して
「SUS316」を使用。 及び更にコーティング処理として「株式会社 カナック」サーフ処理もしくは、「株式会社 極東窒化研究所」SP処理をしている。
ヒーターにおいては、チタン製を使用。
又、部品種類により(ユーザー様とのお打合せにより)コスト問題が有りますが『チタン化』『セラミックコート』『ホーロー処理』を致しております。
2) はんだ撹拌スクリュウ部に対しては、スクリュウの効率を上げることで従来機より
回転数を落としての使用より、酸化物発生率を大幅に減少することに成功N2供給により低減させる方法(従来の約1/10)も可能(オプション)
3) マスクノズル及び噴流ノズル等に熱効率(オーバーフロー等)及びハンダの上下動の安定化及びN2供給(オプション)による酸化膜対策等を同時考慮している。